D/P・D/A取引と信用状以外の荷為替取引 | Maritime Wiki

概要

信用状取引とは異なり、D/P(Documents against Payment)やD/A(Documents against Acceptance)取引では、輸入者の銀行が輸出者の銀行に対して支払い保証を行いません。これが最大の特徴であり、輸出者は輸入者の信用力に依存した取引となります。関与する銀行はあくまで取立銀行として機能するにとどまり、代金回収リスクは輸出者が負担します。なお、輸入者のみが保証するSingle L/Gも同様に銀行の連帯保証がない点でリスクの高い取引形態です。

ポイント: 現在の国際貿易ではT/T送金が主流となっており、L/C取引は新規・高リスク取引や特定地域向けで引き続き活用されています。D/P・D/A取引はその中間に位置する決済手段です。

目的・役割

これらの取引形態は、信用状を利用しない場合においても輸出入取引の決済を円滑に進めるために利用されます。特に輸入者との信頼関係が確立された継続的な取引や、L/C発行コストを抑えたい場合に用いられ、書類と引換えに貨物を引き渡す仕組みによってリスクのバランスをとることを目的とします。

D/P・D/A取引の全体イメージ

D/P・D/A取引では、輸出者と輸入者の間に銀行が入りますが、 信用状取引と異なり、輸入者側銀行が支払を保証するわけではありません。 銀行は主に船積書類の取次ぎと代金取立の役割を担います。

D/P・D/A取引の基本フロー
輸出者 商品を船積みし、船積書類を銀行へ提出
輸出者の銀行 船積書類を輸入者側銀行へ送付
輸入者の銀行 輸入者へ書類到着を通知
輸入者 D/Pは支払後、D/Aは手形引受後に書類を受領
輸出者 → 輸出者の銀行 → 輸入者の銀行 → 輸入者
D/P・D/A取引では、輸入者が支払わない場合でも、輸入者の銀行が当然に代金を支払うわけではありません。 ここが信用状取引との大きな違いです。

D/P・D/A取引の基本的な流れ

D/P取引では、輸入者が書類と引換えに代金を即時支払う方式です。一方、D/A取引では輸入者が荷為替手形を引き受けることで書類が交付されますが、実際の支払いは手形期日まで猶予されます。

項目 D/P(支払渡し) D/A(引受渡し)
書類交付の条件 代金の即時支払い 期日付手形の引受け
銀行の担保権 支払完了まで保持 手形引受時点で消滅
輸出者のリスク 比較的低い 手形引受後は高い

特徴

  1. 輸入者銀行の支払い保証がないため、代金回収リスクは輸出者が負担する。取立銀行はあくまで書類の送付・取立を仲介するにとどまる。
  2. 担保差入れや国内融資枠の利用により買取が行われることもあるが、基本的には取立てによる資金回収が中心。
  3. 信用状取引に比べて書類は迅速に輸入銀行に到着する傾向がある。
  4. 航空便の場合、Air WaybillはB/Lと異なり有価証券ではないため担保力がなく、Consignee欄に銀行名が記載された場合でも、銀行は航空会社に対して債務保証を負わない(海上B/LのBank L/Gとは異なる)。輸入者は銀行から発行されるRelease Order(丙号T/R提出と引換)を用いて貨物を引き取る。
  5. D/P取引は輸入者が代金を支払った後に書類を受け取り、D/A取引は期日付手形を引き受けた後に書類が引き渡される。D/A取引では手形引受時点で銀行の担保権は切れるため、以後の代金回収は輸入者の信用力に依存する。
  6. 海上輸送のD/P・D/A取引では、貨物が先に到着した場合にT/R(輸入担保荷物保管証)を銀行に差し入れることでB/L等を借り受けて貨物引取が可能となるが、輸入者による手形決済が完了するまで銀行は貨物の担保権を保持する。

信用状取引との違い

信用状(L/C)取引は、発行銀行が書類の内容を条件として支払いを確約する仕組みです。これに対しD/P・D/A取引では、輸入者の銀行はあくまで書類の「取次ぎ役」に留まり、支払いを保証する義務を負いません。輸入者が支払いを拒否した場合、輸出者は書類(=貨物)を手元に取り戻すことはできますが、その間の費用や機会損失は輸出者が負担することになります。

信用状(L/C)取引

信用状条件に合致した書類が提出されることを前提に、 発行銀行が支払を確約します。

輸出者は、輸入者本人の信用だけでなく、銀行の支払確約を前提に取引できます。

D/P・D/A取引

銀行は船積書類の取次ぎや取立を行いますが、 原則として輸入者の支払を保証しません。

輸入者が支払わない場合、輸出者側に代金回収リスクが残ります。

実務上のポイント

  • 輸出者銀行は輸入者銀行の支払い保証がないため、輸出者の与信管理・信用調査が重要。
  • D/P取引では輸入者の支払い完了後に書類が引き渡されるため、資金回収のタイミングを把握する必要がある。
  • D/A取引は後払いの手形決済となるため、輸入者の信用力が低い場合はリスクが高まる。手形引受後は銀行の担保権が消滅し、期日不払いのリスクを輸出者が全面的に負う。
  • 航空便の場合、AWBは有価証券ではないため、D/P・D/A取引では銀行名をConsigneeとしてRelease Orderで管理する方法が取られるが、送金(T/T)ベースで決済するのが一般的。
  • T/Rの提出と連帯保証人の設定が一般的で、銀行の担保管理が行われる。

注意点

  • 書類到着前に貨物が到着するケースがあり、特に近距離航路・航空便で顕著。
  • 銀行名がConsigneeの場合、Release Orderの提出が必須で、これがないと貨物引渡しは認められないことが多い。ただし航空貨物の場合、銀行は航空会社への保証責任を負わない。
  • 輸入者が倒産した場合、未回収リスクは輸出者が負担し、銀行から損害賠償請求を受けるリスクは海上B/L使用時のL/G引取りのケースで生じうる。
  • D/A取引は手形引受後に輸入者が書類を受け取るため、期日に支払わなかった場合の回収手段が限られる。

具体例

航空便でのD/P取引の場合、Air WaybillのConsigneeが銀行名となっていることがあり、輸入者はAir T/Rと外貨建約束手形を銀行に提出し、銀行から発行されるRelease Orderを通関業者に渡して貨物を引き取ります。その後、銀行経由で到着する船積書類をもって手形の決済または引受けを行います。

海上D/A取引では、書類到着後に荷為替手形の引受けを行い、銀行はT/Rを受けて書類を引き渡しますが、手形引受後の担保権は消滅するため、期日決済は輸入者の信用力に委ねられます。

まとめ

D/P・D/A取引は、信用状取引と異なり銀行の支払い保証がないため、輸出者側の信用管理と担保設定が重要です。特にD/A取引では手形引受後に銀行の担保権が消滅する点に注意が必要です。航空便ではAWBが有価証券でない点から担保力が限定的であり、送金(T/T)決済との組み合わせが実務上は一般的です。書類の到着タイミングと輸入者の信用力に応じてリスクが変動するため、実務では銀行指図書やT/Rの適切な運用が求められます。