サーベイについて

国際輸送中に貨物の破損、濡損、錆、数量不足、温度逸脱、荷崩れその他の事故が発生した場合、事故発生時の貨物状態、損害範囲、事故原因、発生時期・区間等を第三者の専門家が調査することがあります。

この調査を一般にサーベイ(Survey)といい、調査を行う専門家をサーベイヤー(Surveyor/鑑定人)と呼びます。

サーベイでは、貨物そのものだけではなく、梱包、コンテナ、積付状態、温度記録、受渡記録、写真、運送書類その他の資料を確認し、その結果がSurvey Reportとして取りまとめられます。

Survey Reportは、貨物海上保険の保険金請求、運送人・NVOCC・倉庫・国内運送会社等への損害賠償請求、事故原因の検討、損害額の算定、再発防止等に利用されます。

ただし、Survey Reportだけで運送人等の法的責任が自動的に確定するわけではありません。貨物の損傷状態や原因についての重要な証拠となりますが、最終的な責任判断ではB/L、運送契約、適用約款、事故発生区間その他の資料も併せて確認します。

貨物事故が発生したら最初に確認すること

貨物事故では、サーベイヤーを手配すること自体よりも、事故直後の状態を失わないことが重要です。

事故発見後は、可能な範囲で次の資料・状態を保存します。

  • 貨物全体及び損傷部分の写真・動画
  • 外装、木箱、パレット、緩衝材その他の梱包材
  • コンテナの床、壁、屋根、ドア、Seal等の状態
  • POD、D/R、EIR、倉庫受渡記録等
  • B/L、Sea Waybill、AWBその他の運送書類
  • 温度管理貨物の場合はData Logger、Reefer Download等の温度記録
  • 数量不足の場合は重量、梱包数、Seal番号、入出庫記録
  • 修理見積、メーカー点検報告、品質検査結果等

特に梱包材やコンテナは、事故原因を判断する重要な証拠になる場合があります。貨物を開梱した後、直ちに廃棄・返却すると、後から浸水経路、衝撃、荷崩れ、梱包不備等を確認できなくなることがあります。

サーベイはすべての貨物事故で必要とは限りません

軽微な損傷で、事故原因、発生区間、損害額が明確であり、写真や受渡記録だけで十分説明できる案件では、正式なサーベイを行わないこともあります。

一方、次のような事故では、早い段階でサーベイを検討することが重要です。

事故・貨物 サーベイを検討する主な理由 特に保存すべき資料
高額貨物 損害額が大きく、保険・責任双方で争点になりやすい Invoice、写真、運送書類、梱包資料
機械・精密機器 外観では内部損傷を確認できない場合がある Shock Indicator、メーカー点検、修理見積
濡損・錆・カビ 水の侵入経路、結露、梱包等の原因を確認する必要がある コンテナ、梱包材、貨物状態の写真
冷凍・冷蔵貨物 温度逸脱と品質損害の因果関係を確認する Data Logger、Reefer Download、品質検査
食品・医薬品 損傷だけでなく安全性・販売可否が問題になる 温度記録、検査結果、品質判定
数量不足 どの輸送・保管区間で不足したか特定する必要がある Seal、重量、POD、倉庫記録
梱包不備が争われている場合 輸送中の外力と梱包強度のどちらが原因か判断する必要がある 出荷前写真、梱包仕様、損傷状態
複数の運送人・倉庫等が関係する場合 事故発生区間と責任主体が争われやすい 各区間の受渡記録、運送書類

誰がサーベイを手配するのか

サーベイを手配する者は一律ではありません。

荷主・cargo ownerが直接サーベイヤーを依頼する場合もあれば、貨物海上保険会社が指定又は手配するSurveyorが調査する場合、運送人・NVOCC側が自社の責任確認のために手配する場合、複数当事者がJoint Surveyを行う場合もあります。

したがって、事故発生時には「誰がSurveyorを呼ぶか」だけでなく、誰のために、何を確認するSurveyなのかを明確にします。

貨物海上保険に加入している場合は、独自にSurveyorを手配する前に、できるだけ早く保険会社又は保険代理店へ事故を通知し、指定Surveyorの有無、Surveyの要否、必要資料等を確認します。

Survey Feeについても、誰がSurveyを依頼したか、保険契約上どのように扱われるか、事故原因・責任関係等によって取扱いが異なるため、事故ごとに確認します。

貨物事故で行われる主なSurvey

貨物損害検査(Cargo Damage Survey)

貨物に損害又は不具合が発見された場合に、貨物の状態、損害範囲、考えられる原因、修理可能性、残存価値等を調査するSurveyです。

貨物海上保険の保険金請求や、運送人その他の関係者への損害賠償請求に使用される重要な基礎資料となります。

Insurance Survey

貨物海上保険の事故処理に関連して、保険会社又は被保険者側の目的で行われるSurveyです。

損害状態、事故原因、損害額、修理可能性、残存価値、損害拡大防止等が確認されます。

保険会社がSurveyorを指定する場合があるため、事故発見後は早期に保険会社又は保険代理店へ連絡します。

Carrier Survey

shipping line、NVOCC、その他のContracting Carrier又はActual Carrierが、自らの運送区間における貨物状態、事故原因、責任の有無等を確認するために行うSurveyです。

Carrier側が手配したSurvey Reportは重要な資料ですが、その手配目的や調査範囲を確認し、当然に中立的な最終判断と考えないことが重要です。

Joint Survey

cargo owner、保険会社、Carrier、NVOCC、倉庫会社等、複数の関係者が同一の貨物状態を共同で確認するSurveyです。

Joint Surveyの利点は、事故時点の貨物状態について関係者間で共通の事実認識を持ちやすくなることです。

ただし、同じ現物を共同確認したからといって、事故原因や法的責任について全員が同じ結論になるとは限りません。

Counter Survey

相手方が作成したSurvey Reportの事故原因、損害範囲、梱包評価等に異論がある場合に、別のSurveyor又は専門家によって追加調査・再評価を行うことがあります。

現物や梱包材が処分されてからでは再調査が困難になるため、原因評価に争いが予想される案件では早期の対応が重要です。

Survey Reportの読み方

Survey Reportに記載されている事項は、大きく「確認された事実」と「Surveyorによる専門的な意見・推定」に分けて読む必要があります。

記載内容 性質 実務上の確認
貨物・梱包の状態 現認した事実 写真・動画・検査日時と照合する
損傷数量 計測・確認した事実 Packing List等と照合する
事故原因 専門的な推定を含む どの資料・痕跡を根拠としているか確認する
修理可能性 技術的評価 メーカー・修理業者の意見も確認する
残存価値・損害額 評価 Invoice、修理費、Salvage等と照合する
責任主体 法的評価を含む場合がある B/L、運送契約、適用約款等を別途確認する

特に、「損傷原因はフォークリフト接触と考えられる」という原因推定と、「そのフォークリフトを使用した会社が法的に損害賠償責任を負う」という結論は別問題です。

Survey前に貨物を動かしてはいけないのか

事故状態を保存するため、可能であればSurveyまで貨物・梱包を維持することが望まれます。

しかし、Surveyを待つことで損害が拡大する場合は、安全確保や損害拡大防止を優先します。

例えば、濡損貨物の乾燥、冷蔵貨物の適正温度への復帰、汚染貨物の隔離、危険物の安全な移動等が必要になる場合があります。

このような場合には、処置を行う前に写真・動画を撮影し、貨物状態、梱包、数量、温度、作業内容等をできるだけ詳細に記録します。

Surveyのために損害を拡大させず、損害を防止するために証拠を消してしまわないことが重要です。

その他の主なサーベイ

貨物現状検査(Condition Survey)

出荷時又は指定された時点で、貨物本体及び梱包の状態を確認し、その状態を記録・報告するSurveyです。

出荷前の貨物状態を第三者が記録しておくことで、後日損傷が発見された場合に、どの時点で状態が変化したかを検討する重要な資料となります。

喫水検査(Draft Survey)

ばら積貨物等について、貨物積載前後の船舶の喫水変化等から積載貨物の重量を算出する検査です。

船舶の喫水、バラスト、燃料、清水その他の重量要素を確認し、船舶の排水量の差から貨物数量を算定します。

倉口検査(Hatch Survey)

船舶から貨物を揚荷する際などに、船倉内の貨物状態、損害の有無等を確認する検査です。

損害が発見された場合には、その状態を記録し、必要に応じて関係者への通知、Survey、損害拡大防止その他の対応につなげます。

積付検査(Stowage Survey)

重量物、プラント、特殊機械その他の貨物について、安全に輸送できる積付方法、固縛方法、輸送設備等を確認するSurveyです。

輸送手段、輸送経路、貨物重量・寸法・重心、船舶又は車両の条件等を考慮し、事故防止の観点から積付・固縛状態を確認します。

ロスプリベンション・サーベイ(Loss Prevention Survey)

貨物事故が発生した後ではなく、輸送前又は物流工程の改善時に、潜在的な貨物事故要因を調査し、事故を未然に防止又は軽減するためのSurveyです。

貨物、梱包、荷役、積付、輸送経路、保管、温度管理等を確認し、事故発生可能性の高い工程を特定します。

Loss Prevention Surveyを活用することにより、次のような効果が期待できます。

  • 貨物事故の未然防止
  • 同種事故の再発防止
  • 梱包・荷役・輸送作業品質の改善
  • クレーム対応業務の削減
  • 事故原因分析に基づく物流工程の改善
  • 継続的な保険・リスク管理の高度化

貨物事故におけるSurveyの実務フロー

  1. 貨物事故を発見する。
  2. 貨物、梱包、コンテナ、数量、温度等の状態を写真・動画で保存する。
  3. 貨物海上保険に加入している場合は、保険会社又は保険代理店へ速やかに連絡する。
  4. Contracting Carrier、Actual Carrier、NVOCC、倉庫等の関係者へ事故を通知する。
  5. 事故内容、損害額、原因争いの有無からSurveyの要否を判断する。
  6. Insurance Survey、Carrier Survey、Joint Survey等、必要なSurveyの種類を整理する。
  7. Surveyorへ貨物状態、梱包、原因、損害範囲、修理可能性等の確認を依頼する。
  8. 必要な損害拡大防止措置を実施し、その内容を記録する。
  9. Survey Reportを受領し、写真、運送書類、POD、D/R、Invoice等と照合する。
  10. 保険金請求、Carrier Claim、求償その他の後続手続へSurvey結果を利用する。

まとめ

サーベイは、貨物事故が発生した際に「誰が悪いか」を直ちに決めるためだけの手続ではありません。

最も重要な役割は、事故直後にしか確認できない貨物、梱包、コンテナ、数量、温度、保管・受渡状態等を第三者の専門的な視点で記録し、後から検証できる証拠として残すことです。

貨物事故では、Insurance Survey、Carrier Survey、Joint Survey、Counter Survey等、複数のSurveyが行われることがあります。それぞれ手配者と目的が異なるため、誰が手配したSurveyなのか、何を調査したReportなのかを確認します。

また、Survey Reportは保険金請求や運送人へのClaimで重要な証拠になりますが、それだけで保険補償や運送人責任が自動的に確定するわけではありません。Insurance Policy、B/L、運送契約、適用約款、事故発生区間その他の資料と併せて判断します。

貨物海上保険に加入している貨物で事故が発生した場合には、独自にSurveyを進める前に、できるだけ早く保険会社又は保険代理店へ連絡し、Surveyの要否、指定Surveyor及び必要資料を確認することが重要です。

貨物事故対応では、事故発生直後の数時間・数日間にしか残せない証拠があります。Surveyの要否を早期に判断し、現物と記録を保存することが、その後の保険金請求・責任追及・事故原因究明の基礎となります。

外部リンク:一般社団法人 日本海事検定協会|輸出入貨物関連