※下記は、UCP600の国際輸送に関わる主な条項を抜粋し、各概要を説明したものです。詳細は、当該書籍をご一読ください。

 

第3条 解釈

①信用状は明記されていなくても、『取消不能(Irrevocable)』である旨が明示されています。

(注意)  No.500 (UCP)の第8条-aでは、「取消可能信用状は、受益者に対して事前の通知なく、いつ何時でも発行銀行により条件の変更または、取消される」旨が規定されていますので、信用状の発行国によっては、注意が必要です。

②書類の発行人を表示するために使用される下記の用語は、受益者以外の者が発行している場合に受理されます。
「first class, well known, qualified, independent, official, competent, local」等

③「on or about」等の文言は、ある出来事が指定日の最初の日と最後の日を含めて5暦日期間内に行なわれるべきとされています。

④船積み期間の決定のための用語解釈は下記のようになります。
「to, until, till, from, between」は、記載日をふくみます。 「before, after」は、記載日を含みません。

⑤支払期日の決定のための用語解釈は下記のようになります。
「from, after」は、記載された日を含みません。

 

第14条 書類点検の標準規定

①指定銀行、確認銀行または、発行銀行が書類の点検のために費やせる期間を書類呈示の翌営業日から最大5営業日としています。

②運送書類は、信用状の有効期限内かつ船積後21暦日よりも遅れることなく、受益者より呈示されなければなりません。

③商業送り状以外の書類の物品、サービスまたは履行の記述は、信用状と食い違わない一般用語で記載することができます。

④書類の日付は、信用状の発行日よりも前の日付で記載されていても許容されますが、書類の呈示日より遅い日付は、受理されません。

⑤運送書類上の受益者と発行依頼人の住所は、信用状記載の住所と一致しなければなりません。
それ以外の書類は、信用状記載の同一国内の住所であれば、一致しなくても受理されます。
また、住所の一部としての「電話番号、ファックス番号、メールアドレス」等は、無視しても良いとされています。

⑥運送書類は、第19-20-21-22-23-24条の要件を充たせば、運送人、船舶所有者、船長、傭船者以外の当事者(フレイト・フォワーダー)によって発行された書類でも受理されます。

 

第18条   商業送り状(Commercial Invoice)について、次のように規定しています(譲渡可能な信用状の場合を除く)。

①受益者によって発行されたもの

②発行依頼人の名称宛に作成されたもの

③信用状の通貨と同一通貨で作成されたもの

④署名がなくてもよい、但し、署名を要求している(signed Commercial Invoice)場合は、その限りではありません。

⑤商業送り状が信用状の金額を超えていても、指定銀行、確認銀行または、発行銀行が信用状を超える金額をオナーしていない場合、または買取をしていない場合にディスクレとしないで受理します。

⑥商品名、サービスまたは履行の名称は、信用状に記載されている記述と一致してなければなりません。

 

第20条   船荷証券について

①運送人の名称を明記してあり、下記の者により署名されていること。
・「運送人または、運送人の代理人」 または
・「船長または、船長の代理人」で、それぞれの立場を明示していること、また、誰の代理人としてかを明示していること。

②物品が、信用状に記載している船積港で、当該船舶に船積されたことを下記の方法で明示していること。
・事前の印刷文言により明示していること  または
・積込済みの付記により物品が船積された日付を明示していること

*船荷証券の発行日は、船積日とみなされますので、積込済みの付記(on board notation)がある場合は、
付記に記載された日付が船積日とみなされます。

③信用状に記載している船積港から陸揚げ港までの船積を明示していること。

④船荷証券上に記載のある全通(通常3通)であること。

⑤運送約款を明記しているか、出所を言及していること。
*運送約款の内容は、点検されません。

⑥傭船契約に従うことの文言を含んでいないこと。

 

第26条   運送書類上の文言と追加費用について

①貨物が「On Deck(甲板積み)」されている、またはされる旨の文言を表示している運送書類は受理されません。
但し、貨物が甲板に積載されることができる旨の表記(the goods may be loaded on deck)は受理されます。

②「shipper’s load and count」「said by shipper to contain」を表記している運送書類は受理されます。

③運送賃に追加される諸費用が表示されている運送書類は受理されます。

 

第27条   無故障運送書類について(clean transport documents)

「無故障」の文言が記載されていない運送書類を、銀行は受理します。

「無故障運送書類」とは、物品や梱包に損傷等(瑕疵)があり、その旨のリマークや追記が明示されていない書類。

※実務的には、L/I(letter of indemnity)を差し入れて無故障運送書類を発行してもらいます。

 

第28条   保険書類と担保範囲

①保険証券(Policy)、保険承認状(Certificate)、確定通知書(Declaration)等の保険書類は保険会社等により発行され、署名されていなければなりません。代理人による署名は、誰を代理として署名されたかを明記しなければなりません。

②保険書類が1通より多く発行された場合は、全ての原本の呈示が必要となります。

③カバーノートは、受理されません。

④保険証券は受理されます。

⑤保険書類の日付は、船積日の日付より遅くない日付でなければなりません。但し、保険期間が船積日より前に開始されている旨の記載がある場合を除きます。

⑥保険書類は、保険担保の金額を明示し、かつ信用状と同一の通貨で発行されていなければなりません。

⑦保険金額は、信用状に示されている送り状等の価額のある割合と明記されている場合、その金額が最低金額とみなされます。
※通常、「insurance for 110% of invoice value」と表記されている場合が多いですが、この場合にインボイス金額の最低110%という理解となります。信用状に特別の明記がない限り、保険金額の超過は、ディスクレとなりません。

信用状に保険担保範囲の金額の記載がない場合の保険金額は、CIF/CIP価額の110% でなければなりません。

CIF/CIP価額が書類上で決定できない場合は、オナーまたは買取を求められている金額または、送り状に記載されている物品の総額のいずれか高い金額に基づき作成されていなければなりません。

⑧保険書類は、少なくとも信用状に記載されている「受取地」、「船積地」、「陸揚地」、「最終到着地」のいずれかの区間を担保している旨を表記していれば受理されます。

⑨信用状に特別の定めがない場合の保険書類は、担保されない危険に係わらず受理されます。

※信用状は基本的な保険条件やもしあれば付加危険を記載すべきであると規定しています。
以上より、契約先による保険手配の補償内容は、通常最小限の担保内容であることが想定されます。

⑩保険書類が、免責条項や少額免責または少額控除免責等を含む文言を表記していても受理されます。

 

第31条   一部船積(Partial Shipment)の定義

①同一の運送手段により、かつ同一行程に向けて開始される船積は、運送書類が同一の到着地向けであれば、異なった船積日/船積港、異なった受取地または発送地を示していても一部船積とはみなされません。
1組以上の運送書類が呈示される場合は、その最も遅い船積日が船積日となります。

※例えば、輸出貨物を同一の仕向地(国)に名古屋港と横浜港から出荷する場合に、その両港を寄港する同一の外航本船に船積する場合は一部船積とはみなされません。船積日は最後に寄港した貨物の船積日となります。
この場合に、信用状で一部船積が禁止されていても、船積期限内であれば受理されます。

②同一の運送形態による運送方法で、同じ日に同一の到着地に向けて出航した場合は、一部船積とみなされます。

※例えば、輸出貨物を同一の仕向地(国)に名古屋港と横浜港から出荷する場合に、船積日が同じ日であってもその両港から別々の外航本船に船積する場合は一部船積とみなされます。
この場合に、信用状で一部船積が禁止されていたら、一部船積としてディスクレになります。

 

第32条 分割船積(Shipment by Instalments)

一定期間内に分割した船積が規定されている場合には、その分割部分の許容期間内に船積されないと信用状は全ての利用ができなくなります。

 

【参考文献】
【外部リンク : 信用状統一規則の実務Q&A
【外部リンク : ICC荷為替信用状に関する統一規則及び慣例