【Surrendered B/Lの概要】
第1の方法
有価証券としての船荷証券が発券されず、FAXまたはE-mailでその船荷証券様式にSurrenderedとスタンプされた船荷証券の表面だけを荷送り人から荷受人へと送付され、荷揚港では船荷証券と交換なしで貨物が荷受人へ引渡される方法です。
第2の方法
有価証券としての船荷証券が発券されないのは同様ですが、船会社から荷送り人に対して裏面約款も一緒にFAXまたはE-mailで送付する方法です。その後荷送り人から裏面約款が荷受人に送付されているかは分かりません。荷揚港では船荷証券と交換なしで貨物が荷受人へ引渡される方法です。
第3の方法
有価証券としての船荷証券が発券されて、荷送り人から裏書を受けてSurrenderedとスタンプを押してから全通回収します。その後荷送り人から荷受人に送付されて、荷揚港では船荷証券と交換なしで貨物が荷受人へ引渡される方法です。
【Surrendered B/L利用の経緯】
元来は荷主に対してHouse B/L(流通証券)を発行しているフォワーダーが、船会社に対して貨物到着地でスムースな貨物の引き取りを行うために行っていました。これによりOcean B/Lの到達地での差し入れも必要なく個別の諸チャージ支払いも割愛することにより本船到着後直ぐに貨物の引取りを可能な状態にしておき、荷主に対してはHouse B/Lの差し入れと諸チャージの支払いと引き換えにD/Oを発行していました。
また、本支店間の取引等の場合でB/Lの流通が必要ないケースの取引に利用されていました。
近年、船足の短い韓国や中国からの輸入において、荷主に対してのHouse B/L(流通証券)をフォワーダーが発行せず元地回収(Surrendered B/L)を行う取引が多発しています。
理由としては、荷為替を組む取引が減少し送金ベースの取引が多くなった事や上記のメリットの他にBL紛失の回避、更には商品代金自体をも回収する手段(船荷証券が無いため、請求金額の全額を支払わないとDOを発行しない―所謂代引きのシステム)として利用されていると確認しています。
【日本国内の法的位置づけ】
①日本の裁判所は、上記第1の方法につき、交付及び提示が性質上当然に予定されている国際海上物品運送法6条の船荷証券に当たらない旨の判例を出しました。
<ポイント>
B/L裏面約款の運送契約を締結したことには該当しない
②国際海上物品運送法契約は、船荷証券が発行されていなくても、国際海上物品運送法を適用することになっています。
<ポイント>
Hague-Rules,Hague-Visby Rulesは、船荷証券が発行されない時は条約の適用の余地がない。
しかし日本に輸入の際は、国際海上物品運送法が適用されパッケージリミテーションが有効である。
③商法581条で運送品が到達地に達したる後は荷受人は運送契約に因りて生じたる荷送り人の権利を取得する。
<ポイント>
荷受人は途中で貨物が全て無くなってしまった場合は、船会社に対して何の権利も主張できない。
【各立場による問題点】
<荷 主(例1)>
Surrender B/Lにより日本に輸入を行い、貨物が波ざらいまたは投げ荷等により仕向港に到達できない場合に、荷受人は運送人に対して損害賠償請求権を取得できない。
<ポイント>
外航貨物海上保険の被保険利益には影響を及ぼさないため、インコタームズの契約条件に順じ損害に対して保険金が支払われます。
しかし荷受人は運送人に対して損害賠償請求権を取得できないため、保険会社は代位求償を行使できないので保険成績の悪化を避けられません。
<荷 主(例2)>
荷送人が仕出港での船積み諸チャージ未払いの場合やその他の諸費用を荷受人が請求された場合に、B/Lオリジナルを所持していないため、荷渡し請求権が行使できずに、支払いを拒否した場合に留置権を盾に貨物を引き渡してもらえずに荷受人にて負担を余儀なくされます。
<ポイント>
B/Lオリジナルがないために荷物の引渡し請求権を行使できない。
<NVOCC>
荷送人が裏面を全く知らない状況でB/LをSurrenderした場合は、運送契約の内容は当事者間で成立しないため、フォワーダーは裏面約款の内容を主張できない。
<ポイント>
日本の場合は国際海上物品運送法が適用されパッケージリミテーションが有効ですが、輸出や三国間の取引においては、各国の法律の問題となりますので、Hague-Rules, Hague-Visby Rules条約の適用の余地がなく、パッケージリミテーションが無効となる可能性が大きい。
また、交付及び提示が性質上当然に予定されている国際海上物品運送法6条の船荷証券に当たらないと判断された場合のB/L賠償保険への求償ができないケースが想定されます。