Sea Waybillを利用するとき、実務担当者からよく聞かれるのが「Originalは何通発行するのか」という質問です。
Bill of LadingではOriginalの発行部数が貨物引渡しと密接に関係しますが、Sea Waybillでは発行部数の意味が異なります。
Sea Waybillは非流通性の運送書類であり、Original B/Lのように、そのOriginalを所持・裏書・呈示することによって貨物引渡しを管理する有価証券ではありません。
そのため、紙でSea Waybillを発行する従来の方法だけでなく、現在ではOriginalを0通とし、Sea WaybillをPDF等の電磁的方法で交付する運用も行われています。
紙のSea Waybillは通常1通で発行する
紙媒体でSea Waybillを発行する場合、日本の実務ではOriginalを1通として運用するケースが一般的です。
ただし、この「1通」はOriginal B/Lの1通とは法的な意味が異なります。
Original B/Lでは、Original・Duplicate・Triplicateなどの表示があっても、それぞれが一組のOriginal B/L setを構成し、正当なOriginal B/Lの所持・呈示が貨物引渡しと密接に結び付いています。
一方、Sea Waybillは非流通性の運送書類であり、Originalそのものを貨物引渡し請求権を表章する証券として使用するものではありません。
Sea Waybillでは、原則としてSea Waybillに記載されたNamed Consignee又はその正当に授権された代理人であることを確認し、Carrier所定のRelease Procedureを完了して貨物を引き渡します。
したがって、紙のSea Waybillを1通発行したとしても、その1通を仕向地へ国際宅配便で送り、Original B/Lのように貨物と交換することを意味するものではありません。
貨物引取などで紙を使用する場合は複数通発行することがある
Sea WaybillはOriginal B/Lのような呈示証券ではありませんが、Carrier、Local Agent、仕向国、Port of Discharge等の手続によって、紙のSea Waybillを提出するよう求められる場合があります。
例えば、D/O発行、Consignee確認、貨物引取、税関手続その他のLocal Procedureのために、Sea Waybillのhard copyを提出・回収する運用です。
このような場合には、必要に応じてSea Waybillを複数通発行することがあります。
ただし、複数通を発行したからといって、B/LのOriginal・Duplicate・TriplicateのようなOriginal setになるわけではありません。
Sea Waybillの複数通発行は、主として書類保存、現地提出、回収その他の実務上の必要性によるものです。
現在はOriginalを0通にする方法がある
Sea WaybillではOriginal B/Lのような原本呈示を貨物引渡しの基本条件としないため、そもそも紙Originalを作成しない方法があります。
この場合、Original発行部数を、例えば次のように記載します。
Number of Original Waybill(s): 0
NVOCC CLUBも、Sea WaybillをPDFで作成してメール等で送付する場合にはOriginalを発行しないため、Original部数を「0枚」とする方法を案内しています。
この場合でも、Sea Waybillそのものを発行していないわけではありません。
「Original 0通」とは、紙媒体のOriginalを0通とし、Sea WaybillをPDFその他の電磁的方法で作成・交付するという意味です。
なぜOriginal 0通でも貨物を引き取れるのか
Original 0通でも貨物を引き取れる理由は、電子化されたからではなく、Sea Waybillそのものの法的・実務的性質にあります。
Original B/Lでは「誰が正当なOriginal B/Lを所持しているか」が重要になります。
Sea Waybillでは、「誰がSea Waybill上の正しいNamed Consigneeなのか」が重要になります。
貨物到着後、Carrier又はLocal Agentは、Arrival Notice、本人確認資料、Authorization、D/Oその他の仕向地手続を通じて、Named Consignee又はその正当な代理人を確認します。
したがって、Sea Waybillでは紙Originalが0通であっても、CarrierがNamed Consigneeを正しく確認できれば、所定のRelease Procedureによって貨物を引き渡すことができます。
紙Originalを発行すると印紙税を検討する必要がある
日本で紙のSea Waybillを発行する場合には、印紙税についても確認が必要です。
ここで重要なのは、「Sea Waybill」という書類名称だけで課税・非課税が決まるわけではないという点です。
国税庁は、貨物運送業者が荷送人へ交付する文書について、運送物品の種類、数量、運賃、発地、着地等が記載され、運送契約成立の事実を証する目的で作成されている場合には、その標題にかかわらず第1号の4文書「運送に関する契約書」に該当するとしています。
したがって、紙のSea Waybillがその内容・作成目的から「運送に関する契約書」又は貨物運送引受けを証する文書として扱われる場合には、印紙税の課税関係を確認する必要があります。
第1号文書に該当する場合、国税庁の印紙税額一覧では、記載された契約金額によって税額が異なり、契約金額の記載がないものは200円とされています。
なお、国税庁の一覧表では「運送に関する契約書」に送り状は含まれないともされています。そのため、紙のSea Waybillが課税文書に該当するかどうかは、単にWaybillという名称だけではなく、実際の記載内容、作成目的及び契約上の機能によって判断する必要があります。
紙を複数通作成した場合は各通の性質を確認する
紙のSea Waybillを複数通作成する場合も注意が必要です。
国税庁の印紙税基本通達では、同一内容の契約書を2通以上作成し、それぞれが契約成立等の課税事項を証明する目的で作成された場合には、それぞれの文書が課税文書に該当するとされています。
また、「写」「副本」「謄本」などと表示されていても、契約成立を証する目的で作成されている場合には課税文書となることがあります。
したがって、Sea Waybillを複数通発行する場合には、単純に「Originalが何枚あるか」だけで判断するのではなく、各紙面が何の目的で作成され、誰へ交付され、契約成立を証する文書として使用されるのかを確認する必要があります。
JIFFAも実務解説として、WAYBILLを第1号の4文書に該当すると判断する場合には、複数Originalを発行すると各Originalについて印紙税を検討する必要がある旨を説明しています。
B/Lとは印紙税の考え方も異なる
B/LとSea Waybillは、発行部数だけでなく印紙税上の位置付けも同じではありません。
Bill of Ladingは、印紙税法上「船荷証券」として独立した課税文書に位置付けられています。
一方、Sea WaybillにはB/Lと同じ有価証券性・流通性がなく、紙で作成されたSea Waybillについては、その実質が運送契約の成立を証する文書に該当するかどうかを確認することになります。
したがって、B/LのOriginal・Duplicate・Triplicateと、Sea Waybillの1通・複数通を、単純に同じ「Originalの枚数」として比較することはできません。
Original 0通・PDF発行なら電磁的記録自体に印紙税はかからない
紙Originalを作成せず、Sea WaybillをPDF等の電磁的記録として作成し、電子メールその他の電子的方法で交付する場合は扱いが異なります。
国税庁は、印紙税の課税対象となるのは課税物件表に掲げられた「文書」であり、電磁的記録はその文書に含まれないため、電子メールで送信した電磁的記録自体には印紙税は課税されないとしています。
国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」
そのため、紙Originalを必要としないSea Waybill取引では、Originalを0通としてPDF等で交付することにより、紙の発行、印紙、郵送、保管及び紛失管理等の事務を減らすことができます。
Originalを0通にしても裏面約款までなくしてはいけない
Original 0通・PDF発行で特に注意したいのが、Sea Waybillの裏面約款です。
紙Originalをなくすことと、運送契約条件をなくすことは全く別の問題です。
Sea Waybillの裏面約款には、運送人の責任範囲、責任制限、免責、貨物引渡し、準拠法、裁判管轄その他の重要な契約条件が記載されています。
Sea Waybillの表面だけをPDFで送付し、適用される約款をShipperやConsigneeが確認できない状態にしていると、事故・紛争発生時に、運送人が責任制限や免責その他の約款条項を契約条件として主張できるかが問題になる可能性があります。
JIFFAでも、旧Waybillのショートフォーム約款について、荷主、特にConsigneeが取り込まれた約款を参照できない場合には、事故時に運送人が約款上の免責や責任限度を主張しても認められないおそれがあるとの問題意識から、現行Waybillを裏面約款全文を記載するロングフォームへ改訂しています。
したがってOriginal 0通で運用するときは、
- Sea Waybill表面
- Sea Waybill裏面約款又は適用されるWaybill Terms
を一体としてPDFで交付するか、少なくとも契約締結時に相手方が確実に参照・保存できる方法で提供しておくことが重要です。
Originalを0通にしても、約款まで0にしてはいけません。
紙1通・複数通・Original 0通の違い
| 項目 | 紙Original 1通 | 紙Original複数通 | Original 0通・PDF |
|---|---|---|---|
| 主な用途 | 通常の紙発行 | 現地提出・回収等が必要な場合 | 紙Originalを必要としない取引 |
| 紙Original | あり | 複数あり | なし |
| B/LのOriginal setと同じか | いいえ | いいえ | 該当しない |
| 貨物引渡しの中心 | Named Consignee確認 | Named Consignee確認+Local Procedure | Named Consignee確認+Local Procedure |
| 紙の呈示・回収 | 原則として貨物引渡しの基礎ではない | Local Procedureにより行われる場合がある | 紙Originalなし |
| 印紙税 | 文書の内容・機能により確認 | 各紙面の作成目的・機能により確認 | 電磁的記録自体には課税されない |
| 郵送・紛失管理 | 必要 | 必要 | 紙Originalについては不要 |
| 裏面約款 | 紙面等で確認 | 紙面等で確認 | PDF等で確実に提供する |
Original 0通が利用しやすい取引
Original 0通によるPDF発行は、Original B/Lによる貨物支配を必要としない取引で利用しやすい方法です。
- 商品代金の決済が完了している取引
- 長年継続している信用取引
- 親会社・子会社等のグループ企業間取引
- Open Account等で継続的に行われる取引
- 輸送中に貨物を第三者へ転売する予定がない取引
反対に、代金を回収するまで輸出者が貨物引渡しをコントロールする必要がある場合には、Original発行部数を考える以前に、Sea Waybillを使用すること自体が適切かを検討する必要があります。
発行前に確認すること
- 今回の取引でOriginal B/Lによる貨物支配が必要ないか
- Carrier及び仕向地でSea Waybillを使用できるか
- 紙Originalを発行する実務上の必要があるか
- 紙を発行する場合、何通必要なのか
- 仕向地で紙の提出・回収が必要なのか
- Original 0通・PDF発行にできるか
- Sea Waybill表面と適用約款を電子的に交付・保存できるか
- 仕向地でNamed Consigneeの確認に必要な書類・手続は何か
まとめ
Sea Waybillの発行部数は、Original B/Lの発行部数とは意味が異なります。
紙でSea Waybillを発行する場合にはOriginalを1通として運用するケースが一般的ですが、仕向地で紙の提出・回収その他のLocal Procedureが必要な場合には、複数通発行することがあります。
一方、Sea Waybillは非流通性の運送書類であり、Originalそのものの呈示を貨物引渡しの基本条件としないため、現在ではOriginalを0通としてPDF等で発行・交付する方法も利用されています。
Original 0通とはSea Waybillを発行しないという意味ではありません。
紙Originalを作成せず、Sea Waybillそのものは電磁的方法で作成・交付するという意味です。
また、紙Originalを発行する場合の印紙税は、「Sea Waybill」という名称だけで判断するのではなく、その文書の記載内容、作成目的及び契約上の機能から課税文書に該当するかを確認する必要があります。
PDF等の電磁的記録だけで交付する場合、その電磁的記録自体は印紙税の課税対象となる文書には含まれません。
ただし、電子化によって紙をなくしても、運送契約条件まで省略してはいけません。
Originalを0通にしても、Sea Waybill表面と適用される裏面約款を確実に交付・保存できる状態にしておくこと。
これがSea WaybillをPDFで発行するときの重要な実務ポイントです。
Sea Waybillそのものの仕組み、Original B/L、Surrendered B/L、Telex Release、Straight B/Lとの違いについては、「Sea Waybill(海上運送状)の仕組みと使い方」で詳しく解説しています。
